訪問記
宇都宮は東京から新幹線で40分ほど。在来線の東北本線を使っても1時間30分ほどで行ける。仕事では日帰り圏内であり何度も訪れている。ただし、城跡を見学するのは今回が初めてのこと。もっとも何度も宇都宮を訪問しているが市内中心部を訪れたことはまれで、ほとんどは郊外の工場や事業所だ。
宇都宮城は徳川将軍が日光参詣する際の宿泊場所となった城。古地図で見ればそれに相応しい備えのある城だが、残念ながら遺構はほとんどない。いや、全くと言っていいほど残っていない。現在城址公園として土塁が築かれ、コンクリート製の櫓が二基再現されているが、何だか映画の撮影セットを見せられているように感じる。歴史を後世に伝える必要があるのかもしれないが、土塁や堀の遺構が全く残っていない場所にわざわざ新しく作り直す必要があるのかとも思う。城跡巡りを趣味とする者にとって、遺構の整備や建物の再現をすることは歓迎するが、これはちょっと違うのではないかと考えさせられる。歴史博物館としての役目もあるのだろうが、逆に安っぽい歴史を伝えられているように感じてしまう。中世から江戸時代まで宇都宮城が重要な役割を果たした場面は多々あると思うが、こうした歴史を伝える箱モノが本当に必要なことなのかと、地元の人に聞いてみたかったが、おせっかいで無責任なよそ者と嫌われるのを恐れて黙って城跡を後にした。
(2012年7月22日) |