訪問記
15年ほど前になったが、佐倉市に事務所を置いて勤務したことがある。仕事といえばバブル時代の後始末が中心業務で思い出したくないことのほうが多い。思い出したくないことは、15年も経つとほとんど忘れてしまう。もっともこれは人によるから、忘れてしまった私はもともと楽天家なのかもしれない。
仕事の内容は忘れてしまったが、佐倉の町は忘れてはいない。佐倉城址にはもちろん何度か行った。城址公園には国立歴史民族博物館があったので、そこにも2度ほど行った。町中に残された江戸時代の記念物も仕事の合間に立ち寄り見物した。時には博物館の駐車場に車を止めて昼寝をして仕事をさぼったことも何度かある。約1年半、佐倉の町に居ただけだが、久しぶりに訪れて、なんだか故郷に帰ったような気になる。同時に、やっぱり、思い出したくない仕事も多少は甦ってくる。ちょっと複雑な思いを抱えながら、改めて佐倉城址を隅から隅まで歩いてみた。ちょっと空模様が不安な午後のひと時だったが、過去を引きずった心の整理をつけることもできなかったが、まあ、それはそれで懐かしさもある。今は心に多少の余裕はある。15年前は立ち入ることがなかった場所も今回は訪ねることができた。城郭跡をほぼ一周して佐倉城の規模の大きさを初めて実感した。石垣はなくすべては土塁であるが10万石の禄高にふさわしい規模と品格を持った城に改めてこの城の壮大さを知る。(2011年5月27日) |