訪問記
甲府の駅には商用で何度も降り立った。そこから甲府城の石垣が見える。だが、一度も甲府城に行っていない。時間がなかったわけではないが、行く気がしなかった。そのことに特段の理由があるのではないが、強いて思えば、あまりにも綺麗に積まれた石垣が私の足が向かうのを躊躇させていたのかもしれない。 古城のイメージではなく、近代土木の結晶のような石垣である。ちょっとマイナスイメージを持って訪ねたのだが、そんな先入感を打ち消すスケールの大きさに、甲府城の果たした役割を思い知る。私の生半可な知識の思い込みを反省する。
甲府城は豊臣から徳川へ権力が移行する時期に完成した城である。豊臣政権下では江戸の家康を監視する目的として、江戸時代には信濃方面の守りの要として、また徳川政権に最も近い親藩の居城として重要な役割を演じた城である。ここに天守閣が存在していたのであればさぞ景色がいいものと想像するが、実際に存在していたかどうかは論争になっているようだ。
城内を散策するが、かなり広い。一定の散策ルートがあるのでもく、気が向くまま足を動かせて歩き回るが結構石段のこう配がきつい場所もある。歩き疲れてベンチに座り、夕暮れに差し掛かった城を眺めるのもいいものだ。城内の石段を高校生の運動サークルがトレーニングの場所として利用している。地方の中核都市の城下町で過ごす青春時代はきっといい思い出になるに違いない。場所は違うが昔の若かりし時代を少し思い出した。(2011年6月4日) |