訪問記
春日山城から信濃の北の端にある飯山城へ向かう。上信越道を豊田飯山ICで降り、千曲川にそって走る国道117号線を北に向かう。10分ほど走って、小高い台地状の緑に囲まれた場所が城跡だとすぐに分かった。
観光地化されていない場所だと思ったが、小型車なら100台ほど駐車できる駐車場が大型バスに占拠されて満杯状態。何とかスペースを見つけて駐車する。観光バスから降り立つ人はいずれも中年女性。まさか飯山城の見学が目的とも思えない。よく見れば皆さん長さ70センチ、幅20センチ、厚さ10センチほどの荷物を持っている。お城跡の敷地内に建てられたなんとか会館に入っていく。どうやらここで開催されるなんかの催しものに参加するために集まったようだ。取りあえず私の御城見物が騒音で邪魔されることはないだろうと安堵する。
お城の雰囲気は想像していた通りだった。本丸跡には神社が建てられていたが神主が常駐している様子もない。石垣や土塁はよく整備され保存されているが、観光客を相手にしているのでもない。住民の憩いの場であるだけだ、そんな空気が伝わってくる。町興しのためにお城を商品化していないのがいい。いや、だからと言って観光地化したお城を非難しているのではない。私のような無計画でいい加減な旅人を受け入れてくれるお城がなければ困る。とはいえ、あまりにも商業化された施設では興ざめする。その辺のバランスが難かしいが、飯山城のような城跡に出会うとほっとした気分になる。
本丸に登ると千曲川の眺めがよい。こんな場所に住んで、気が向けば城跡をのんびりと散策する。そんな余生を送ることができたら幸せなんだろうなあ、と思いつつ千曲川の水の流れにしばし見とれる。(2011年6月4日) |