訪問記
小諸城には上田城を訪ねた帰り道に行った。島崎藤村の歌「小諸なる古城のほとり 雲白く遊子かなしむ」は誰でも一度は口ずさんだ思い出を持つ。ついでに同じ藤村の歌「千曲川旅情」”昨日またかくてありけり 今日もまたかくてありなむ この命なにをあくせく 明日をのみ思いわづらふ いくたびか栄枯の夢の 消え残る谷におりて 阿波のいざよふ見れば 砂まじり水巻き帰る ああ古城なにをか語り 岸の波なにをか答ふ”同行者の国文科出身のカミさんは一人思いに耽っている様子。経済科出身の私は(ただし、4年間ほとんどを雀荘で過ごしたが)江戸時代の最初の藩主だった仙石忠政が、この地で産出する蕎麦の取引で大儲けをした話に興味をそそられる
小諸城は現在は懐古園として公開されている。庭園主体の公園かと思って門をくぐったが、予想に反してかつての城跡が十分に残されている。櫓や天守閣は無いが、残された石垣を見て、千曲川のほとりに建つかつての城郭がよみがえってくるようだ。心静かに歩けば、私にも藤村の歌が浮かんでくる。(2004年5月3日) |