訪問記
松本城を訪れたのはこれで何度目なのだろう。はっきりとした記憶がないが5、6度、いやそれ以上訪れているかもしれない。学生の頃は穂高や上高地に行ったついでに寄った。社会人になってからも信州を旅する度に都合がつけば立ち寄った場所だ。松本城は何度見ても飽きない。訪れる時期、時間によってその姿が変化する。もっとも、冬の時期は訪ねていない。春から秋にかけて、ほとんどは夏場に訪ねている。今度も秋に訪れた。何度も訪ねた場所だが、写真に記録したのは数えるほどしかない。家庭を持って、子供と訪ねた時に記念写真を撮った程度だ。学生の頃は写したり写されたりするのを嫌っていた。 特段理由があったのではないが、自分の目で見たもの以外は信じなかったし見たものは全て記憶にとどめることが出来た。思い出を残そうとの発想はなかった。過去を振り返るなど、そんな思いになることを馬鹿にしていた。
今は、自分の目で確かめたものですら、それを長く記憶に留める自信がない。もっとも記憶に残す価値があるものとは思えないことばかりだが、そうなら忘れ去ればいいだけだが、確かにその通りだが、何だかそれも寂しい気分になった。今、60歳を過ぎて、自分の足跡を記録しておこうと、つまらない事を考えるに及んで、せっせと写真を撮りまくっている。
何度も訪れた松本城だが、ほとんどは短時間の立ち寄りで終わっていた。今回は松本城を訪ねることを第一の目的にしていたので少し時間をかけた。実のところ、天守閣の最上階に登ったのは今回が初めてのことだ(記憶が薄れているので間違っているかもしれないが)。月見櫓に登ったのは記憶にあったが、急な階段(はしご?)を登って松本城下を眺めた記憶はなかった。
天守閣から眺める北アルプスの姿に改めて感動した。若いころに登った山々を見て、むかし見た夢を思い出している。時間が過去に戻るのは、そんな気分に浸るのもたまにはいいものだと思う年代になっている。(2010年11月7日) |