訪問記
山城というのは素人目には実につまらない。殆どは山林や草に覆われて曲輪の跡も判別できない。中世の城跡であっても考古学の対象のような趣がすると、そんな先入観があったが山中城はよく整備されて築城当時の様子が復元されていた。私のような素人には歓迎だが、専門家には却って不満なのかもしれない。
国道1号線を神奈川方面から箱根を越え、10分ほど下れば山中城跡の看板が目に入る。この道は何度も通るので、城跡を記した案内看板は以前より気が付いていた。しかし、昨今のお城ブームの所為か看板は新しくなり、そして何カ所も目立つ。そんなイメージからわざわざ車を止めて城跡見物するのをこれまで敬遠していたが、私もブームに乗っかった俄かお城ファン。今回は箱根を訪ねたついでに足を伸ばした。
三の丸堀外に造られた駐車場に車を止め最高点の西の丸、西櫓跡を目指して山道を登る。箱根の山のイメージから急勾配を予想していたが意外になだらかな道。登り始めた地点がすでに標高の高い場所であったのか、山城というのにそれほどの高さを感じないまま最高点に到着する。小田原北条氏の造った障子堀は、防護のためのものというより庭園のような趣がする。堀に落ちた敵兵が身動きできないようにする仕掛けだが、果してそれほどの効果があったのか疑問に感じる。復元された障子掘りは何処か牧歌的ともいえる雰囲気だが、おそらく築城当時は堀が芝で覆われたりせず、剥き出しの土であったのだろうからもう少し殺伐とした光景であったのだろう。
秀吉軍の来襲に備えて山中城は拡張されたようだが、大軍を前にしてわずか半日で落城したという。そんな悲劇を感じさせないほど長閑な空気の漂う初秋の一日。戦を忘れた農民兵の気分で城跡に横たわる。(2011年10月2日) |