訪問記
初めて駿府城を訪れたのは社会人になってしばらくしてから。2年ほどの間に5,6回は訪れたと思う。それはもう30年以上昔のことになってしまった。その時は県の関連団体に用があって訪ねた。当時の県庁は今のような高層建物でなかったがお堀の中の同じ場所に建っていた。他府県にも城跡に県庁舎が建設されていることはよくあったので不思議とも思わなかった。むしろ土地の有効利用の一つの方法だとさえ思っていた。当時は城跡にそれほどの興味もなかったのだが仕事を終えてお堀沿いに散策したことは記憶にある。それは今とは全く違う光景だった。地方都市の静かな佇まいの城跡だった。30年前の記憶にある駿府城は石垣とお堀しかなかったが、城下町の落ち着いた風情を感じた。それが随分と様相が変わっている。二の丸の東門は再建されて城郭らしさを取り戻した。しかしなんとなく城下町の風情が失われたような気もする。高層建築の建物が城の何処からでも眺められる。高層建物は発展する都市の象徴であるのならこれも時代の流れであるから止むを得ないのかもしれないが、進化はやはり何かを犠牲にしなければ成り立たないようだ。もっともこんな話はだれでも感じることだろうし、そして誰も解決できない話だ。そうであるなら素直に城跡を散策した方が楽しい。以前は仕事の途中で立ち寄っただけで休日にここを訪れたのは初めてなので比較の対象ではないかもしれないが 30年前に比べ観光する人の姿も多くなったように感じる。いまどきの何処にでも見られるカメラ叔父さんやカメラおばさんではなく若い人の姿が多く見られるのは、自分のことはさておき、気分が明るくなる。30年前の仕事は期待したほどの成果が得られなかったが、この近くで食べた鰻の味はまだよく覚えている。あのときの鰻屋はまだ続いているのか分からないが城跡見物が終わったら探してみようと思う。(2011年12月18日) |