日本の城ある記(東海の城・丸子城) 

 東海の城 トップページへ 日本の城ある記 トップページへ 
 丸子城  (まりこじょう)

訪問記
 静岡駅から藤枝駅前行のバスに乗り「吐月峰駿府匠宿入口」と長い名前のバス停で下車。そこから駿府匠宿まで歩いて約10分。時刻は午前8時半。まだ匠宿の観光施設は開いていない。匠宿と道路を隔てた民家の間の狭い路地に丸子城の入り口がある。路地を抜け畑地の中の平坦な道を100mほど進むと急な上り坂になる。木杭で階段状に整備されているが、一気に登り切るにちょっとしんどい。急ぐこともないので、休息しながらゆっくりと進む。
 丸子城は「鞠子城」とも書き、東海道の宇津ノ谷峠に近いこともあり「宇津谷城」とも呼ばれている。標高約140m、比高約100mの山上の「くの字」状に屈折した尾根上に約600mわたり多くの曲輪が築かれている。
 この地に最初に城郭を築いたのは応永年間(1394〜1427)に今川氏の家臣・斎藤氏。今川氏の拠点である駿河府中の西の守りとして重要な役目を担っていた。永禄3年(1560)今川の統領・今川義元が桶狭間で織田信長に討たれ、衰退するのに合わせて、永禄11年(1568)武田信玄が今川領に侵攻し駿府に入り、丸子城には重臣の山県昌景を配した。この時以降、駿河西部の今川勢の攻略拠点として大規模な改修が行われたと推測される。
 天正9年(1581)武田氏が支配する高天神城を徳川家康が落とし、同時に丸子城の武田勢も戦うことなく退去して家康の支配となる。天正10年(1582)武田勝頼が天目山で自刃して武田氏が滅亡すると、徳川家康は駿府に入城し、丸子城には重臣を配した。家康は対豊臣秀吉を意識して城郭を大改修。現在見られる大規模な横堀、丸馬出などはこの時に整備されたものと推測される。
 天正18年(1590)豊臣秀吉による小田原征伐により小田原城が落城して北条氏が滅亡すると家康は関東移封となり、丸子城は廃城となった。









 急こう配の階段道を登り切ると結構な広さの平坦地に出る。そこには稲荷神社の小さな社が建っている。また「駐屯地(外曲輪)」と書かれた案内標識もある。駐屯地であるならこの場所には兵士の仮小屋が建っていたのだろうか。もっとも戦時体制であれば簡易な小屋掛けすらなく兵士は野宿同様の駐留を強いられていたのかもしれない。
 

 
 
 
 外曲輪の駐屯地から尾根を伝い北曲輪に向かう。北曲輪の手前には攻め手が一列になってしか進むことができない土橋があり、その先には三日月堀に防御された大手曲輪が待ち受けている。大手曲輪を抜け、北曲輪に入るにも桝形虎口があり、簡単には攻め入れない工夫が施されている。
 北曲輪は「くの字」状の尾根のちょうど屈折した場所に位置する。本曲輪(本丸)に次いで広い面積の曲輪である。今川氏が支配していた時代には本曲輪はまだ築かれておらず、それは武田氏が支配していた時代に築城されたものでと言われているので、今川氏の時代は北曲輪が本丸の役割であったようだ。
 北曲輪の北側には土塁が築かれ、その下には本曲輪まで続く長い横堀が掘られている。また三の丸(三の曲輪)との間には深い竪堀が掘られ、三の丸(三の曲輪)二の丸(二の曲輪)ともに北側には土塁が築かれ、北曲輪から続く横堀が土塁下に掘られている。北曲輪から本丸(本曲輪)までは高低差はほとんどない。
 
 
 
 
 
 
 
   
 二の丸(二の曲輪)と本丸(本曲輪)と の間には空堀が掘られ、本丸の虎口は桝形虎口となっている。また北側と南側の一部に土塁が築かれている。本丸(本曲輪)は武田氏による城郭の大修理によって新たに築城されたとされる。
 
 
   
 本丸北の平虎口から西に三日月堀に囲まれた丸馬出が築かれている。本丸からそこに至るには(侵入者が丸馬出から本丸に至るには)迷路のような複雑な構造の空堀や土橋を通る必要がある。また、丸馬出から通路としても利用されたと思われる長い竪堀が掘られていて、竪堀から侵入する敵があれば丸馬出から攻撃することが可能な構造になっている。
 
 
 
 
 
 
 
   
 本丸(本曲輪)からの帰路は往路と同じ道を辿る。同じ道を通っての帰路だが、登城時には気付かなかった椿の花が通行を妨げるようにこぼれていた。侵入を防ぐための空堀なら躊躇なく立ち入って通り抜けるのだが、花びらを踏みつけるのは少し抵抗がある。踏みつけないように慎重に脇を通る。
 下山したのは午前11時頃。丸子城に滞在したのは約2時間半。今日はほかに予定がない。このまま横浜に帰るには早すぎる。バスには乗らず、丸子川に沿って東海道線の安倍川の駅まで歩くことにする。約1時間の行程だが途中には丸子(鞠子)宿がある。ちょうど昼時、名物のとろろ飯を食べようと思う。(2018年3月11日) 

  ページトップへ 

 
Copyright(C) tenjikuroujin.jp All Rights Reserved.