訪問記
平成6年に復元された掛川城は東海道新幹線の車窓から眺めることが出来る。関西方面に主張する時、大抵は早朝に新横浜から新幹線に乗り込む。新聞に一通り目を通して、ウトウトしかけた時、山側に目をやると、「あんみつ姫」の舞台に登場するようなお城の姿が飛び込んでくる。車窓から見た掛川城は、「どうせ町興しのシンボルとして造られたコンクリート製のおもちゃの様な城」と、そんな思いでいた。
最初に目にしてから、15年以上の歳月が過ぎた。たまたま仕事ではないが関西方面に用があり、新幹線でなく高速道路を利用して車で出かけることにした。「おもちゃのような城」との印象だったが、この城が100名城に数えられていると知って、それならばと立ち寄ってみることにした。渋滞を避けるため、まだ薄暗い時間に横浜ICに入り掛川ICに着いたのは10時少し前。ICからは10分足らずの距離に掛川城があった。「おもちゃのような城」の印象は、大手門をくぐり、防御の為の堀として利用されている逆川に出て、高台にそびえる天守閣の姿を遠望して、その瞬間に訂正することになった。どうしてどうして、風格のある、いや、貴品すら感じる姿である。
新幹線の車窓からはコンクリート製のちゃちな城の印象だったが、天守閣やその他の建物も全て本格的な木造建築である。板張りの廊下を歩く時の木のきしみ音が何とも心地よい。高齢者の仲間入りに近づいた身にはちょっと厳しいが、はしご状の階段も当時のままだ。観光客に変に媚びたりしない姿勢が気に入った。天守閣の最上階から眺める掛川の町も優雅に見える。そういえば、少し前に高知城を訪れたが、最初に掛川城に天守閣を建てたのは後に土佐一国の大大名となった山内一豊である。高知城の天守と掛川城の天守は良く似ているように感じる。
天守閣は復元されたものだが、御殿は江戸末期の安政2年(1855)〜文久元年(1861)に建てられたものが今に残っている。古い建物だがメンテナンスがしっかりしているのか、御殿の中を自由に歩き回って見学できるのがいい。殿さまの気分になって、床の間を背にして座ってみる。国の重要文化財になっている建物でこのようなことが出来るのが何とも素晴らしい。期待した以上の楽しい時間を過ごすことが出来た。(2010年10月23日) |