日本の城ある記(関西の城・鬼ケ城) 

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 鬼ケ城 (おにがじょう) 

ある
 朝、まだ薄暗い時刻。宿の窓から外を眺めると本降りの雨だった。今日は熊野市駅からバス便を乗り継いで1時間ほどの距離にある「赤木城」を訪れる予定。午後からはもっと激しい雨になりそうだと、天気予報。赤木城は山里から離れた平山城で「土の城」。訪れるのは諦めることにした。このまま一日何もしないのも癪なので宿の近くの鬼ケ城を訪れることにした。
 40年近く昔のことだが、奇岩で有名な観光地「鬼ケ城」を訪れたことはある。これから訪ねる鬼ケ城はその奇岩の山頂にある。
 鬼ケ城の観光センター駐車場の端に登城路がある。雨は小降りになっている。登り始めようとしたときは傘を必要としないほどだった。それでも急な登城路(おそらく観光用に整備した登城路で、本来はなかった道だと思う)は雨をたっぷり吸ってぬかるんでいる。小川のように雨水が流れている場所もある。岩に足を取られて滑り落ちる危険もありそうだ。ゆっくりと、それでも30分ほど歩いて山頂部に着く。山頂部は幅10m〜15m、長さは40m〜50mくらい。登ったところが鞍部になっていて両脇が一段高くなっている。海側の先は急傾斜になっていて、おそらく奇岩の続く海岸線へ続いているようだ。反対側は、標識に「熊野古道松本峠」に至ると書かれている。地形からして難攻不落な要塞であったことは実感できる。とはいえ、ここで大人数の兵士が籠城するには狭すぎる。飲料も雨水以外は期待できない。案内標識には「鬼ケ城城跡」と書かれている。どのような城があったのか想像するのが難しい。
 鬼ケ城は室町時代の大永3年(1523)頃にこの地の豪族有馬忠親が隠居所として築いたと伝えられる。忠親は親族間の争いで鬼ケ城を攻められ死去。やがては内紛で勢力が衰えた有馬氏は新宮を本拠とする堀内氏に吸収される。
 帰りは熊野古道松本峠方面へとも思ったが、地図の用意がなかったのであきらめる。結局、来た道を戻ることにする。雨の日の下りは登り以上に危険を伴う。慎重に下ったが、一度だけ不用意に雨に濡れた岩に足を乗せ、滑って転んでしまった。(2019年7月22日)
   

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