訪問記
備中高松城は沼地に築かれた平城である。石垣は築かれず、城は土塁で囲まれていた。江戸時代になって城の役割を終えたので、土塁は崩されその遺構はほとんど残っていない。しかし高松城の歴史は長く語り継がれているようだ。現在NHKで黒田官兵衛を主人公とした大河ドラマが放送されている。その舞台の一つに備中高松城が登場し、このために訪れる人も多い。だが多くの観光客は落胆するに違いない。田圃に囲まれた平地を、ここに高松城があったと教えられても、普通の人には何の感慨も湧かないだろう。現に、私もしかり。もう少し城らしい風景が存在するのかと思ったが、期待はずれだった。もっとも、これ見よがしに作られたわざとらしい施設を見せられたとしても、感動などしないだろうから、むしろ何もない方が気分的にはいい。何もなければ勝手な想像もできる。戦国時代の武将になりきり、武と武ではない権謀術策の乱世を恨んでみよう。(2014年10月21日) |