訪問記
津山を出て備中高梁(たかはし)に向かう。津山で降っていた雨は止んでいたが、空は厚い雲に覆われている。目指す備中松山城は標高430mの臥牛山にある。近頃は天空の城として人気のある備中松山城だが、それは雲海の上に浮かぶ姿であって雨雲の中にあっては何も見えず従って何の趣もない。この季節、秋から春にかけての早朝に雲海が発生する可能性が高いというが、今日は見ることはできなかったそうだ。もっとも天空の城見物はハナから予定していなかった。私の目的は実際の城郭に立ち入り見学すること。だが、この雨雲では城まで登っても何も見えないことも予想された。しかしここまで来たので取り敢えず上がって見ることにする。とはいえ麓から徒歩で登るのは時間も労力も必要である。事前に予約しておいた観光乗合タクシーを利用した。
タクシーは本丸下のふいご峠まで。そこから約20分徒歩で登ることが必要だ。
本丸に近づくにつれてモヤも濃くなってくる。初めて訪れた城なので晴れた日の様子は分らないが、ぼんやりとした空気の中に浮かんでくる石垣の様子も幻想的で面白い。雨になれば最悪だが、幸いに今は雨粒は落ちてこない。
備中高松城も維新後は忘れられた存在だったという。山城であり、今は車で登れる道路もあるがしばらくは人が歩く程度の道しかなかったことが幸いしたようだ。麓の御根小屋の建物(藩主の住居・藩政の行われた場所)は取り壊されたが、小規模ながら天守とそれに続く櫓が取り壊されることなく残っている。維新後に他の多くの城郭に残った建物が競売されて取り壊されたが、ここでは取り壊す費用の方が多かったのだろう。昭和初期になって世の中が多少落ち着いた時代に城の建物は修復されたようだ。
人気の城も天候が災い(幸い?)してか訪れる人も少ない。古城と呼ぶに相応しい環境の中で、その姿をゆっくりと見ることができた。(2014年10月20日) |