馬印は戦国時代の武将が自陣の位置と武威を示すために用いた印。もともとは幟や旗を大将の周りに巡らせていたが、それらにとどまらず様々な材料、意匠が考案されるようになった。一般には旗の形をしたものを旗印、そうでないものを馬印とするとされるが、 時代によってその呼称には変化があるようです。
ここに掲載した「御馬印」「籏指物之図」「御指物揃」は国立国会図書館のデジタル化資料をもとに編集したものです。「御馬印」は6巻の絵巻物。「籏指物之図」は2冊の版本。「御指物揃」は3冊の版本です。「御馬印」と「籏指物之図」は図柄、文章の書体が全く同じで、同じ板木を用いて印刷したものと思われます。ただし「御馬印」は彩色刷り(赤白黒黄色等は印刷だが金銀は手彩色)、「籏指物之図」は無彩色です。また「御馬印」の6巻(170人の武将の馬印を掲載)に対して「籏指物之図」は2冊(完本ではない)で、御馬印の第1巻と第4巻に相当する部分しかありません。印刷技術や記載内容から「御馬印」は寛永年間(1624〜1644)に出版されたものと推定されていますが、「籏指物之図」は序文に明暦の年号が記載されていることから明暦年間(1655〜1658)の出版と思われます。但しこれ以前に別版があったことも推測されます。
「御指物揃」は武将の配列、図柄、説明文の書体は「御馬印」と異なっていますが掲載の武将は「御馬印」に準じています。おそらく掲載した3冊が全てでなく(欠落ページもある)完本でないと思われます。掲載の武将数は122人です。序文に寛永14年(1637)の記載がありますが、掲載内容等から確定的なものとは判断されていないようです。
「御馬印」の第6巻の最後は真田伊豆守・真田信之(松城藩の初代藩主。永禄9年1566〜万治元年1658)の馬印が掲載されていることから、この巻物を制作したのは真田家の関係者ではないかと推測します。
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