麹って、どんな役割をするのですか
焼酎に使われる麹には「黄麹」「黒麹」「白麹」があります。それぞれの麹には特徴があり、どれを使用するかによって出来上がった焼酎の風味に影響を与えます。
麹が焼酎作りになぜ必要かなのかは、原料のデンプンを糖化するためです。これは焼酎だけに限ったことでなく、穀物を原料とする酒造りに共通しています。糖分を多く含んだブドウなどの果実を原料とする場合は糖化する必要がなく、酵母を加えることでアルコール発酵が行われます。米、麦、いもといった穀物は酵母を加えるだけではアルコール発酵が行われません。酵母にアルコール発酵の作業をさせるために、麹は穀物のデンプンを糖化するのです。
もっとも原始的な穀物酒に「口噛み酒」があります。蒸したり煮たりして柔らかくした穀物を口に入れて噛む。唾液には糖化酵素(アミラーゼ)が含まれているのでこれを利用します。噛んだ穀物を鍋に吐き出し、それをかき混ぜて放置すれば唾液のアミラーゼがデンプンを消化して糖分が生まれる。その糖分を乳酸菌や酵母が食べて繁殖する。4、5日たてばアルコール度2〜3%のお酒になります。
デンプンを糖化させるには麹以外にも方法があります。西洋では発芽した麦に甘みを感じて「麦芽」という糖化剤を発見しました。ウィスキーの原料になる大麦を糖化するには麦芽を利用して行います。麦芽は発芽に際してアミラーゼの活性を強め、デンプンを糖分に変えます。
一方東洋ではカビの生えた穀物に甘みを感じて「麹」という糖化剤を発見しました。麦芽より麹の方が数段糖化力が強いとされます。その麹も日本と中国では作り方が違います。日本式の麹は蒸した白米(などの穀物)に麹カビの胞子を散布して、蒸米の表面に菌を生やす方法です。中国式は穀物を粉にして、その粉を生のまま水を加えて団子状やせんべい状にみ固め、それを室内に放置してクモノスカビやケカビといった麹菌の繁殖を待つといった方法です。
少しわき道にそれますが、糖化した原料を酵母がアルコールに変えるのですが酵母は酸素が十分である環境ではアルコールをほとんど作りません。酸素がない時、糖の濃度が極めて高い時にアルコールを造る代謝活性が強くなります。酵母が酸素を十分に吸って糖分を分解すると炭酸ガスと水に分解してしまいます。したがって、アルコールをより多く取り出すためには酸素の乏しい糖濃度の高い環境にする必要があります。酒作りに深い桶やタンクを使うのは単に原料がこぼれない為でなく、酸素の供給を少なくして酵母にアルコールをたくさん作らせるためなのです。
前置きが長くなりましたが、焼酎に使われる「黄麹」「黒麹」「白麹」の特徴についてご説明します。まず、名前の由来はそれぞれの麹の色によってつけられたもの。黄麹は黄色い色、黒麹は黒い色、白麹は白い色をしています。ただしこの色が出来上がりの焼酎に着くことはありません。
黄麹は清酒のもろみ作りに使用されていた麹。焼酎の製法が伝来し、従来から日本酒を製造していた醸造所が原料を米にして焼酎を造れば必然的に麹は黄麹になる。明治時代までは泡盛を除いて焼酎には黄麹が使われていました。黄麹は日本酒同様、華やかな香りとさわやかな味、フルーティーで軽やかな風味を生む麹です。しかし弱点は温度管理が難しく、九州などの高温多湿な地域では腐敗菌の発生比率が高くもろみが腐ってしまうこともたびたび起こりました。
黒麹は泡盛の製造に使われている麹。甘みとコクのある力強い味に仕上がるとされます。黒麹の最大の特徴は高温多湿な沖縄で使われていたように腐敗に強いこと。雑菌の繁殖を防ぐクエン酸を多く作ることができる。
白麹は黒麹の突然変異から発見されたもの。明治の末頃にこの黒麹を沖縄から日本に持ち帰り主に九州南部の地方で使われるようになりました。腐敗には強いがそれまでの風味が損なわれることにもなり、試行錯誤が続いたといわれます。そんな中で研究を重ねた結果、白麹が発見された。白麹は黒麹同様に腐敗菌を防ぐクエン酸を生成し、そのうえ甘口でソフトな口当たりに仕上がるとされます。
現在、焼酎作りには黄麹、泡盛用の黒麹、焼酎用の黒麹、それに白麹が使われています。それぞれの蔵がもっともよいとする味を目指して焼酎作りが行われています。また違った麹で造られた焼酎の原酒をブレンドして最適な味に仕上げることもおこなわれているようです |
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