かくばかり めでたく見ゆる 世の中を うらやましくや のぞく月影
四方赤良(よものあから) 万載狂歌集 天明3年・1783
9月29日は旧暦では8月15日。中秋の名月・十五夜の日。「月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月」という作者不明の有名な歌がある。月は約29.5日の周期で満ち欠けを繰り返す。従って一年に満月を見ることができる回数は12回から13回。旧暦で閏月のある今年は13回満月を見ることができる。何れの季節の満月もそれぞれ趣きがあり甲乙つけ難いと思うのだが、多くの人が中秋の名月を愛でるのは、秋の澄んだ空に輝く月が特に美しく見えるからだろうか。
今日の午前中、私が住んでいる地域は厚い雲に覆われていた。秋とはいえ最高気温も30度前後で湿度も高かった。昼間に青空も少し顔を出したが夕刻になって小雨も降った。澄んだ秋空に美しく輝く十五夜の月を眺めるのは無理だと思っていたが、夜が更けるにつれて僅かな時間だが雲が途切れ月の姿を見ることができた。満月の月見に満足した後は月見の団子ときぬかつぎを用意していたので「月より団子」にすることに。
狂歌の作者・四方赤良さんは人が月を眺めるのではなく、月が「めでたく見える地上の世の中を羨ましく思って覗いている」と狂歌に詠み込んでいる。ただし「めでたく見ゆる世の中」は作者の皮肉であろう。
このごろ宇宙人の存在論争が一部メディアで盛んになっている。アメリカ国防省は今年の8月に「UFO(未確認飛行物体)」の目撃情報を一般公開するHPを立ち上げている。真贋はともかくとしてメキシコでは宇宙人とされるミイラが公開された。高度な文明を持つ宇宙人が本当に存在していたなら、彼らは地球の「めでたく見ゆる世の中」を眺めてどんな感想を持つのだろうか。(2023.9.29) |